2008/09/20 (土)

学校には出せない読書感想文B 「ゆれる」西川美和著

本屋でこの本を手に取った時も、読んでいる時も、読み終わった後も、僕はこの小説を否定したくて仕方ない。
田舎の家業を継いで父と二人で暮らす兄と、対照的に東京でカメラマンをしている弟。二人は特に仲が良くも悪くもなく、一定の距離を保ちつつもやってきた。それが幼馴染の女性の死をきっかけに関係が揺らぎ始める。
僕自身、家業を継いでおり、僕の町にもそういう方々が大勢いらっしゃる。小説にある町のイメージは、僕の町とそう変わらないだろう。
僕個人の意見だが、家業を継ぐというのは相当の覚悟がいる。失敗すれば何もかも捨てて夜逃げするしかないからだ。過去の記憶さえも。
真面目一本で家を守ってきた兄が、こういう描かれ方されるのは、正直不愉快だ。自分のみならず、家業を頑張っている人達が馬鹿にされた気持ちにさえなる。前述の否定したくなるとは、そういう事だ。だから、この小説で、兄弟は悲惨な運命を辿るが、どうかこのまま終わらないでくれと、祈るような応援したい気持ちになっていた。
実際にこういう事件があったら同情すらしないだろうが。
ところで、先ほど悲惨な運命と書いたが、それは兄弟だけではない。ここに登場する全ての人が、全て若しくは何かを失う。一人は命さえ奪われているのだ。そんな「奪いっぱなし」の悲惨なストーリーなのに、前途は真っ暗なのに、ラストシーンが清々しいのだ。
本を読み終わって、こんなに清々しい気持ちになるのは久し振りだ。
このラストシーンの為に、このストーリーがあったのだとさえ思う。
そう考えると、この小説を否定する気もしなくなった。